自治体職員が書く“子育て支援・教育行政”

行政窓口で待機児童の家庭のお話をうかがったり、制度設計に奔走している者にしかわからないところを伝えたい、という思いで書いています。子どもの幸せ・親の幸せに幼児教育・保育制度はどう寄与していけるのか、一つひとつ制度を深掘りしていきます。

子育て支援サービスとは(その2)

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子育て支援サービスについて、以下の記事に引き続きまとめています。

kobe-kosodate.hatenablog.com

③日々通園して療育を受けたい

「療育」とは、医療の「療」と教育の「育」を組み合わせたものであり、障害や疾患のある子どもに対するサービスには、医療と教育の両方をバランスよく提供する必要性があることを意図した言葉である。

(『児童家庭福祉論 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度』全国社会福祉協議会

保育所や幼稚園、認定こども園の一部で障害児の受け入れが行われている一方、専門的療育の機能を持ち、発達の遅れや偏り、障がいのある子どもの通所を対象とした施設として、規模の大きい児童発達支援センターと、小規模で地域密着型の児童発達支援事業所があります。

どちらも障害児に対し、日常生活における基本的な動作を指導し、知識・技能を与え、集団生活への適応を訓練するなど必要な支援(医療型の場合、治療も含む)を行うものです。

(1)児童発達支援センター

児童発達支援センターは、センター的な機能として、障がいの種類に関わらず適切なサポートが受けられるよう、関係機関等と連携を図りながら重層的に支援する役割も持っています。

すなわち、日々通園する子どもやその家族に対するサポートのみならず、施設の有する専門機能を活かし、地域の相談対応や、他の施設・事業所への援助や助言も行います。

(2)児童発達支援事業所

児童発達支援事業所は、できる限り身近な場所で支援を受けられるよう、地域において、日々通園する子どもやその家族に対して身近な療育の場を提供するものです。

④スポットで保育を受けたい

パート就労や非常勤勤務等雇用形態の多様化に加え、さまざまな保育ニーズにきめこまかく対応できるよう、これまで見てきた日常的な利用のほか、非定期的な利用についても制度が徐々に拡充され、現在に至っていますが、地域によってはまだ数やサービスが不足している現状です。

(1)教育・保育施設等(再掲)

パート就労や用事、育児疲れ等、さまざまな保護者の必要性に応じて、たとえば週に数日など必要な事由に応じた期間を保育します。

(2)病児保育施設

子どもが病気にかかり保育所等で他の児童との集団生活が困難なときに、保育所等に代わって保育します。

(3)ファミリーサポートセンター

「子育ての応援をしてほしい」子育て家庭と「応援をしたい」地域の人が前もって会員登録しておくことで、保育所等や学童保育の迎えに家族が間に合わない時間を代わりに保育をしたり、保護者の急な用事や病気のとき等に代わりに世話をするといったサポートを行います。

(4)児童養護施設乳児院・母子生活支援施設

子育てリフレッシュステイ事業として、保護者の育児疲れや病気・出産の場合等幅広い理由での一時的な保育を行っています。宿泊を伴うショートステイと、一日のうち一定時間保育するデイサービスがあります。

⑤放課後の居場所・療育の提供を受けたい

働く女性の増加や子どもを取り巻く環境の変化により、子どもたちの安心・安全な居場所づくりがより一層必要となっており、留守家庭の小学生を対象として学童保育がなされています。また、療育としては放課後等デイサービス事業所があります。

(1)学童保育施設

留守家庭の小学生を対象に、児童館や小学校等に設置した学童保育コーナー、地域で自主的に運営している学童保育所を、家庭のように過ごすことができる場所、伸び伸びと遊べる場所として提供しています。

(2)放課後等デイサービス事業所

学校教育と相まって障害児の自立を促進するとともに、放課後や夏休み等における居場所づくりを推進することを目的とする事業所です。

障害児の保護者の仕事と家庭の両立、親の一時的な休息のサポートを行う観点も踏まえつつ、発達に必要な訓練や社会交流の促進その他のサポートを行います。

⑥親子で利用したい

ここまでは、「子どもを預かる」サービスが中心でした。しかし、2歳までの子どもで保育所等に通う子どもは全国的に36.6%で、3歳までの子どもの3分の2ほどは、ふだん家で家族と一緒にいる、いわゆる「在宅育児家庭」であることが、厚生労働省の「保育所等関連状況取りまとめ」(平成30(2018)年4月1日)で示されています。

国は、これまでもさまざまな計画を立てて少子化対策に取り組んできていますが、「子どもを預かる」サービス以外にも力を入れています。

その代表的なものが地域子育て支援拠点であり、たとえば児童館や地域子育て支援センター、保育士等養成大学があります。

(1)児童館

主に午前中は、子どもや親が自由に利用できる地域子育て支援拠点として、乳幼児の親子に対し、登録制や自由参加型の行事・イベントを実施しています。

また、学校の放課後には学童保育を行っています。そのほか、神戸市には拠点児童館があり、楽しく子育てをするための保護者向け講座や専門職向け講座を実施する等しています。

(2)地域子育て支援センター

地域の子育て情報の収集・提供や、子育てサークルへの支援を行っているほか、子育てに関する相談に応じ、講座・行事等も実施しています。神戸市では、区役所や一部の保育所認定こども園に設置されています。

(3)保育士養成校の指定を受けている大学等

保育士養成校の指定を受けている市内の大学等に、乳幼児が自由に遊べるスペースを設け、大学の学生が実践の場として関わりつつ、子育て中の親子が集える場所の提供を行っています。

まとめ

以上は、「神戸市子ども・子育て支援事業計画」を基に障害児通所支援等を加えてリストアップしたものです。

ほかにも自治体によってさまざまなサービスやサポートがあるほか、それぞれの名称も異なっていると思います。

また、そのほかにも、インフォーマルな地域主体のさまざまな支援があります。

その点をご了承いただきながら、参考にしていただければと思います。