自治体職員が書く“子育て支援・教育行政”

行政窓口で待機児童の家庭のお話をうかがったり、制度設計に奔走している者にしかわからないところを伝えたい、という思いで書いています。子どもの幸せ・親の幸せに幼児教育・保育制度はどう寄与していけるのか、一つひとつ制度を深掘りしていきます。

子育て支援サービスとは(その1)

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原「因」を知る「心」と書いて「恩」と読みます。

今の私があるのは誰のおかげ(原因)かと考えると、親はもちろんのこと、たくさんのお世話になった人達のおかげであることに気づきます。

その中でも大切なスタート期の関わりが、幼稚園や保育所など子育て支援サービスに携わる先生方との関わりでしょう。

地域にはさまざまな子育て支援がありますが、それは、子どもや子どもをとりまく家庭環境が多岐にわたるからです。

この記事では、そんな子育て支援サービスについてまとめています。

子育て支援のニーズ

子育て支援のニーズを大きくまとめるならば、

大前提として、①母子共に健やかでありたい保健ニーズがあります。

また、②共働きやひとり親家庭等を理由として保育を受けたい、加えて小学校の入学に向けて幼児教育を受けたい、発達が遅れていたり、障がいがあったりして、療育を受けたいといった日常的な通園のニーズもあります。

次に、③毎日ではないが、用事や下の子の出産、育児のリフレッシュ、親の病気等の緊急時などスポットで保育を受けたいニーズ、また、④小学校に入学してから、放課後の居場所の提供を受けたい、療育を受けたいニーズもあります。

そのほか、⑤在宅で育児をしているなかで、育児のリフレッシュや子どもの成長のために、子連れで参加・利用したいニーズもあるでしょう。

そのような家庭の子育て支援ニーズに対応するために、国は法律を作り、支援のメニューや活用する園や事業をリストアップしています。

平成27(2015)年、それら子育て支援の土台となる制度面の大改正がありました。この子ども・子育て支援新制度のスタートによって、年金、医療、介護とともに、「子育て」が社会保障の柱として恒久的な財源(税金)で安定的に実施されることになりました。

支援や援助といっても、それには制度化されたフォーマルなサービスと地域の支え合いといったインフォーマルなサポートがあります。ここでは子ども・子育て支援法と児童福祉法に定める子育て支援・通所支援の代表的なフォーマル・サービスを挙げていきます。

①母子共に健やかでありたい

母子保健は、「次世代を担う子どもが心身ともに健やかに育つことができる地域社会を実現する」ことを目的に、サービス・事業の基本的な担い手として市町村保健センターが、地域住民への直接的な支援拠点となっています。

市町村保健センターでは、妊娠する前からの切れ目のない支援を目標に、母子保健法を基に、母子健康手帳の交付、妊婦健康診査の助成、新生児訪問、乳幼児健康診査といった妊産婦や乳幼児に対するサポートのほか、思春期保健として、妊娠・出産を通した命の大切さの啓発授業や、思いがけない妊娠への支援等も行っています。

子ども・子育て支援法にも、地域の子育て支援として母子保健のサポートがリストアップされており、例えば、養育支援訪問は、育児ストレス・産後うつ状態・育児ノイローゼなどによって、子育てに対して強い不安や孤立感を抱える養育者の家庭にホームヘルパーを派遣する取り組みであり、実地に、家事・育児に関する援助や助言を行っています。

②日々通園して幼児教育・保育を受けたい(1)~認定こども園・幼稚園・保育所

日々通園する小学校入学前の子どもに教育・保育を提供するものとして、教育・保育施設地域型保育事業所があります。教育・保育施設とは、認定こども園、幼稚園そして保育所です。

幼稚園は親の就労等の状況によらず主に平日昼過ぎまで保育し、保育所は親の就労等保育が必要な状況に応じて保育が必要な範囲で保育することを基本としています。

ここで重要なことは、保育所が、「地域の子育て家庭に対する支援等を行う役割を担う」と保育所保育指針に大きく定められているのに対し、幼稚園も、幼稚園教育要領に「地域における幼児期の教育のセンターとしての役割を果たすよう努める」こととされ、どちらも単なる幼児向け経営体という枠ではなく、あくまで公共的な社会資源として地域で重要な役割を担っている点です。

詳しくは、以下を参照ください。 

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一方、認定こども園は平成18(2006)年に始まった園であり、平成27(2015)年の子ども・子育て支援新制度により大幅に制度改正されました。これまでの幼稚園と保育所、どちらに通園する家庭の子どもも利用できるような園です。

詳しくは、以下を参照ください。

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②日々通園して幼児教育・保育を受けたい(2)~地域型保育事業所など

これまでも認可保育所以外の保育資源として、地域によってさまざまな小規模保育施設や保育ママといわれるもの、赤ちゃんホーム、家庭託児所等が設けられてきました。

子ども・子育て支援新制度では、それらも国で認可ルールを設けた一定の質を確保したものにしようと、地域型保育事業所という類型をスタートさせ、それに移るよう推し進めました。

地域型保育事業所は、地域課題としての「保育所等の待機児童」と「過疎化」のいずれにも対応しようとするものです。

待機児童は、地域に散在していることが多く、利便性の良い駅の近くに保育所等を建設することが一般的に解決策となり得ますが、交通至便な場所は概して大きな土地が確保できない等の問題があります。

そこで、割合小さな敷地でもつくることができる地域型保育事業所の出番となるのです。

一方、子どもの数が減少している地域では、クラス運営が成り立たないような少人数クラスになった幼稚園と保育所認定こども園に統合することや、地域型保育事業所で特例的に小学校入学まで保育を認めることで、適切な育ちの環境としての集団保育を続けることを可能としています。

ここまでの保育所や地域型保育事業所は認可施設・認可事業ですが、そのほかにも地域にはさまざまな認可外の保育施設があります。

「認可」については、以下を参照ください。

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加えて、平成28(2016)年、国は企業主導型保育事業をスタートさせました。これは、保育する人のうち、半数未満は保育士資格を不要としながら、おおむね保育所並みの基準を満たすことを条件に、国から助成金を受けて従業員や地域の子どもを保育するものです。

認可外保育所ではありますが、事業者に対して国から助成があるため、保育料は一般の認可外保育施設よりは安い傾向にあります。

そのほか、待機児童が多い地域を中心に、自治体独自の基準を満たす園を自治体が認証するなどして「認証保育所」などの名称で運営しているものもあります。