自治体職員が書く“子育て支援・教育行政”

行政窓口で待機児童の家庭のお話をうかがったり、制度設計に奔走している者にしかわからないところを伝えたい、という思いで書いています。子どもの幸せ・親の幸せに幼児教育・保育制度はどう寄与していけるのか、一つひとつ制度を深掘りしていきます。

幼い子どものために「働くべきか、しばらく家で子どもをみるべきか」を悩むとき

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 保育園や幼稚園に入園する前の子どもがいて、出産に伴っていったん仕事を辞めておられるお母さんでしたら、早々に仕事を探して復帰するか、3歳ぐらいまでは家で見た方がいいのかなとか悩まれる方もいます。

 正規社員の人をみて、育児休業が開けてバリバリやっているのがうらやましくもあり、ダンナは外で羽を伸ばしている(一応、仕事ですが)のが腹立たしくもあり、でも、子どもと一日中ずっと一緒にいられるのは、今しかないのかなという気持ちもあり、などなど。

 収入の切迫感もありますので、結局はそれが決断の決め手になる場合が多い面もあります。

 ここでは、そうした悩みについて、「親の自己実現」と「子どもの幸せ」について見ていきます。

親の自己実現と子どもの幸せ

1 自分の気持ちで決めてよい

親が仕事に限らず、自己実現を通じて活き活きと人生を送っていることが、子どもの精神的な安定に重要な要素であるということ、これは間違いないのではないでしょうか。

『こんな働く母親が、子供を伸ばす!』(扶桑社)の著者の松永暢史氏は、日本の専業主婦の家事・育児労働を仕事に置き換えて給料換算してみると、年収約700万円にもなると紹介しています。

しかし、実際に給料は支払われず、休みもありません。それにもかかわらず、周囲に相談や気軽に助けを求めることができる相手がいない、さらに子育て情報のはんらんで、何を信じていいのかわからない、そのような状況におかれた母親が、唯一助けを求めた夫に愚痴をこぼすと、残業帰り(あるいは飲み帰り?)の夫は疲れてろくに話も聞いてくれない。

それでは、息が詰まって、子育てに対する負担や不安、孤立感ばかりになります。

「子育てハッピーアドバイス」シリーズ(一万年堂出版)で著名な明橋大二氏は、「お母さんが働くことは、子どもにとって、プラス? マイナス?」と題してこう述べています。

結論はこうです

外野席の声には惑わされず、自分の気持ちで決めていいのです

「自分は、二つのことを同時にするのは苦手だから、子どもが小さいうちは、育児に専念しよう。経済的には苦しいけれど、そのほうが、自分もゆったり育児ができるわ」と思う人は、育児に専念すればよい。

「自分は、仕事をやめて、家に入ると、よけいにストレスがたまるに決まっているから、子どもを保育園に預けて、仕事をしよう。そのほうが、自分も子どもに優しくなれる」と思う人は、仕事をすればいいのです。

(『子育てハッピーアドバイス』1万年堂出版)

2 まず、おとなが幸せになる

次の言葉は『川崎市子どもの権利に関する条例』の施行を前に、平成13(2001)年3月に行われた報告市民集会で子ども委員会の代表から紹介された、「子どもたちからおとなへのメッセージ」です。

まず、おとなが幸せにいてください。おとなが幸せじゃないのに、子どもだけ幸せにはなれません。おとなが幸せでないと、子どもに虐待とか体罰とかが起きます。  条例に『子どもは愛情と理解をもって育まれる』とありますが、まず、家庭や学校、地域のなかで、おとなが幸せでいてほしいのです。子どもはそういうなかで、安心して生きることができます。

(『川崎市子どもの権利に関する条例 ―各条文の理解のために―』川崎市川崎市教育委員会

 「『子どもに権利なんて、甘やかすだけだ』というおとなの批判に対して、子どもの権利とは何かを一生懸命考えてきた子どもたちからの答えでした」と綴られています。

 ここまでお読みいただきありがとうございました(*^^*)