自治体職員が書く“子育て支援・教育行政”

行政窓口で待機児童の家庭のお話をうかがったり、制度設計に奔走している者にしかわからないところを伝えたい、という思いで書いています。子どもの幸せ・親の幸せに幼児教育・保育制度はどう寄与していけるのか、一つひとつ制度を深掘りしていきます。

子育て支援のイロハ③(保育園や幼稚園の「認可」とは)

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 認可保育園や、認可外保育園、無認可保育園と言う言葉がありますが、「認可」とはそもそも何か、また、平成27年度にスタートした「子ども・子育て支援新制度」で始まった「確認」について見ていきます。

 関連するこれまでの記事は以下を参考いただければ幸いです。

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

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1.「認可」とは

 認可保育園や認可幼稚園として運営しようと思うならば、自治体が審議会(大学の先生や園の先生方の代表などの専門の皆さんのあつまり)に意見を求めた上で、基準(面積基準、職員配置基準、保育指針や教育要領の遵守など)を守って運営を行うものと「認」められ、安心して持続的に経営「可」能だとして、「認可」しなければ、開園(経営)することができません。

 なお、認可を受けずに同じような目的の事業を行うことも可能ですが、それが保育施設の場合、いわゆる「認可外保育所」と呼ばれます。

認可を受けなければ、「幼稚園」や「幼保連携型認定こども園」と名乗ることはできませんが、「保育園」や「保育所」は、認可されなくても、名乗ることが可能です。

2.「確認」とは

 「確認」は何を確認しているのかといいますと、「(市町村が)利用定員を確認する」ということです。

 面積や職員が足りているからといって、どの園も好き放題に子どもを受け入れて運営を行えば、過当競争につながりますし、その好き放題に受け入れた子どもの人数分だけ役所に費用を請求されても、それだけの税金を役所も用意できません。

 ですので「あなたの園では、これだけの人数分の運営規模で運営してもらってOKですよ」と確認するわけです。

 そして、その人数分の経営について税金を投入する以上、最低限守っていただく基準として「運営基準」というものがあります。

 これは、認可の基準とは別に存在します。

3.認可基準・運営基準

(1)認可基準

 開園するには、自治体から認可を受けなければならないと説明しましたが、園の種類によって、認可の基準が異なります。

 まず、認定こども園です。4類型あります。

○幼保連携型認定こども園

 学校+児童福祉施設としての単一施設ですから、幼稚園と保育所の厳しい方の基準を合わせた「認可基準」(ただしくは「幼保連携型認定こども園の学級編制及び設備・運営に関する基準」)を守る必要があります。

○幼稚園型認定こども園

 幼稚園(学校)に認可外保育所(認可されていない敷地部分)が付いた園です。

 「幼稚園の認可基準」(ただしくは「幼稚園設置基準」)と、「幼保連携型以外の認定こども園の認定基準」を守る必要があります。

保育所認定こども園

 保育所児童福祉施設)に認可外幼稚園(認可されていない敷地部分)が付いた園です。

 「保育所の認可基準」(ただしくは「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」)と、「幼保連携型以外の認定こども園の認定基準」を守る必要があります。

○地方裁量型認定こども園

 認可外幼稚園と認可外保育所(どちらも認可されていない敷地)がくっついた園です。「幼保連携型以外の認定こども園の認定基準」を守る必要があります。

○幼稚園

 満3歳以降の子どもを教育する園として、「幼稚園の認可基準」を守ります。

保育所

 乳児からの子どもを保育する園として、「保育所の認可基準」を守ります。

〇地域型保育事業の認可基準

 「地域型保育事業所」ですが、0歳から2歳の子どもを、基本的に少人数で保育する事業で、次の4とおりがあります。

 これらは、それぞれの認可ルールを定めた「地域型保育事業の認可基準」(ただしくは「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」)を守る必要があります。

 このルールで、特に保育所などにくらべてルールがゆるいところは、せまい敷地につくることを見込んでいるため、園庭がなくても近くで代わりの場所(公園・寺社の境内など)があれば良いとしていることや、自分の園で昼食を調理できなくても、他から適切に運んでこれたら良いとしていることなどです。

・小規模保育事業所

 少人数(6~19人)を対象に保育を行います。

 これには、大ざっぱには配置される先生が、①全員保育士であるA型、②半数以上が保育士であるB型、③保育士でなくても決められた研修を受けた先生でもOKのC型、の3類型が国から用意されています。

 ここでも、保育所と同様に0歳(乳児)の段階から「養護と教育が一体になった保育」を提供することとされており、保育所が子どもの保育内容として守るべき『保育所保育指針』に準じて保育を行っています。

・家庭的保育事業所

 家庭的な雰囲気のもとで、少人数(~5人)を対象に保育を行います。

・事業所内保育事業所

 事業所の保育施設などで従業員の子どもと地域の子どもを一緒に保育します。

・居宅訪問型保育事業

 医療的ケアが必要で保育所などでの集団保育が非常にきびしい子どもなど、特定の要件を満たす子どもについて、その子の居宅で保育します。

(2)運営基準

 決まった人数分の経営について税金を投入する以上、最低限守っていただく基準、すなわち「運営基準」です。

 認可の基準とは別に存在します。

 運営のルールには、大きく4点あります。

①子どもの利用開始のときのルール

 利用開始するときには、保育内容や手続きの説明をして、文書で保護者の同意をとって、契約することが必要です。また、きちんとした理由もなく入園を断ることはできません(「応諾義務」といいます)。

②教育・保育の提供についてのルール

 提供する教育や保育の内容について書かれたものに『幼保連携型認定こども園教育・保育要領』や『幼稚園教育要領』、『保育所保育指針』があります。それらを職員全員がよく読んで理解し、それにのっとった園の運営、クラス運営をすることが必要です。

 また、利用中の子どもの心身の状況はつねに心をくばり、もちろん職員が虐待などをしてはなりませんし、親の養育が不適切だ(体が不自然に傷だらけだ)とみとめられることがあれば、きちんと役所と連携して子どもを守る取り組みも必要です。

 そのほか、「地域型保育事業所」は、どうしても小規模な園の都合上、先生の人数も少なく、何か突発的なことがあったときにフォローが行き届きにくく思われること、また、さきほど示したように二歳までの子どもが利用できる園ですので、三歳以上の年齢になると、大きな園(認定こども園、幼稚園、保育所)に転園しなければならないことが保護者にとって不安です。

 そのために、「地域型保育事業所」は、「連携施設」を用意しなければならないというルールがあります。「連携施設」には、近隣の認定こども園保育所、幼稚園がなるのが一般的です。

〇連携施設の役割

 連携施設の役割は次の三つです。

1「保育内容の支援」

 連携施設の先生が、保育内容を教えにいったりする。また、共同で行事をしたりする。

2「代替保育士の提供」

 地域型保育事業所の先生が研修などの事情で手が足りないとき、連携施設の先生がフォローにいく。

3「三歳以上の受け皿」

 地域型保育事業所を卒園する子どもの人数を、連携施設側はあらかじめ見込んで、スムーズに転園できるように枠をあけておく。

〇その他

 さらに、役所が決める保育料(「利用者負担」といいます)を保護者から徴収すること以外にも、園によって、英語教室や体操教室など、さまざまな園独自で取り組む費用を別途徴収するもの(「上乗せ徴収」)や、制服代やカバン代、楽器など実費を負担してもらうもの(「実費徴収」)について、保護者の同意をきちんととって、徴収することなどが決められています。

③管理・運営についてのルール

 園の運営方針や職員数、開園時間など重要なことをまとめた「運営規程」をつくって、利用者が見えるところに掲示するなど公表します。

 また、業務上知りえた秘密をもらさない「個人情報保護」のルールを定めて職員間で徹底することや、「非常災害の対策」、「衛生管理」、「事故防止や事故発生時の対応」についてきちんと園でルール化して対応できるよう用意します。

 さらには、 よりよい運営を行うために、「自己評価」や「保護者や地域住民による外部評価(学校関係者評価)」、「第三者評価」という取り組みに努めることや、保護者などからの苦情・要望に対する「苦情解決」の窓口をきちんと用意して、対応するルールをつくっておくことも必要です。

 そのほか「会計処理」についても誤りなく行うよう決められています。

④撤退するときのルール

 最後のルールは、経営を縮小する、あるいはとりやめるという事態になった場合の、保護者に対する対応です。

 この場合、無責任に園を閉めたりせず、子どもがほかの園でスムーズに同様のサービスを継続して受けられるよう、転園のための協力をすることが求められています。

3.まとめ 

 以上が、認可と確認の概要です。

 これら認可・確認について正しく知れば、「認可施設でも認可外施設でも似たようなものだ」とか、「認可外施設への利用も促して、待機児童を減らそう」という言葉は出てこないのではないかと思います。

 また、この認可や確認に基づいて、役所はしっかりと質の確保を図っていかなければなりません。

 それについては、次の記事にも紹介しています。

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

 ここまでお読みいただきありがとうございました。(^^)/