自治体職員が書く“子育て支援・教育行政”

行政窓口で待機児童の家庭のお話をうかがったり、制度設計に奔走している者にしかわからないところを伝えたい、という思いで書いています。子どもの幸せ・親の幸せに幼児教育・保育制度はどう寄与していけるのか、一つひとつ制度を深掘りしていきます。

【書籍販売中】自治体の子育て支援担当になったら読む本

自治体の子育て支援担当になったら読む本 自治体の子育て支援担当になったら読む本を販売中です。 こども家庭庁発足など、こども・子育て支援の新しい政策が実施されようとしていますが、その土台となる理解のおともとして、自治体職員はもとより、教育・保…

「不適切保育」と保育の内容

先日、「『虐待したい人なんていない』 保育現場、負の連鎖」の見出しで、保育現場についての記事が出ていました。 「何でできないの」。駆け出しの保育士だった女性(29)は、2歳の園児を怒鳴った。生活発表会が迫っているのに、教えた歌や踊りの動きができ…

子育て支援のイロハ⑦(保育園等の利用にあたり「保育料(利用者負担額)を支払う」&「給付する」)

保育園や認定こども園の利用の流れについて、「子育て支援のイロハ」として①から⑥までお付き合いいただきました。 最後である今回は「保育料の支払い」と「給付」についてです。 前回の記事は以下をご覧いただければと思います。 kobe-kosodate.hatenablog.c…

子育て支援のイロハ⑥(認定こども園等の入園にあたって「利用契約」する)

保育園や認定こども園の利用の流れの続きを引き続きみていきます。 今回は短い内容ですが、「利用契約」についてです。 前回の記事は以下をご覧いただければと思います。 kobe-kosodate.hatenablog.com 1.利用契約 2.重要事項を説明してもらい同意する …

子育て支援のイロハ⑤(保育園等の入園選考「利用調整」)

保育園や認定こども園の利用の流れの続きをみていきます。 前回の記事は以下をご覧いただければと思います。 kobe-kosodate.hatenablog.com 1.「利用調整」が規定された経緯 ○「1号の認定」を受けている場合 ○「2号や3号の認定(標準時間、短時間)」を…

子育て支援のイロハ④(幼稚園・保育所・認定こども園等の入園に必要な「教育・保育給付認定」)

前回は、園を用意する流れとして、「整備」⇒「認可・確認」とみていきました。 kobe-kosodate.hatenablog.com 次は、その園を利用する方の流れをみていきます。 国では「こども庁」の創設の検討と相まって、幼稚園や保育所を一元的にカバーすることについて…

子育て支援のイロハ③(保育園や幼稚園の「認可」とは)

認可保育園や、認可外保育園、無認可保育園と言う言葉がありますが、「認可」とはそもそも何か、また、平成27年度にスタートした「子ども・子育て支援新制度」で始まった「確認」について見ていきます。 関連するこれまでの記事は以下を参考いただければ幸い…

子育て支援のイロハ②(「整備」:保育園や認定こども園を建てるということ)

先回は、子ども・子育て支援の設計図にあたる「事業計画」について見ていきました。 kobe-kosodate.hatenablog.com その続きについて、これまでの経過を見ていきます。 1.計画どおりに園を用意(整備)する 2.横浜市「待機児童ゼロ」の衝撃 3.女性の就…

子育て支援のイロハ①(子ども・子育て支援の「設計図」)

以前に、認定こども園・保育所・幼稚園に入園するときの「教育・保育認定」というものについて(1号・2号・3号など)について紹介しました。 kobe-kosodate.hatenablog.com また、一部無償にもなっていますので、無償化もみていきました。(新1号・新2…

知事や市長の教育行政への関わり度

以前、公の学校教育を進める教育行政は、教育委員会が主となっていることをみてきました。 kobe-kosodate.hatenablog.com 今回は、首長の役割について少し掘り下げてみていきます。 1.総合調整権、予算調製権 2.首長(市長など)が行う教育行政の仕事 首…

学校の組織が役所にわかりづらいところ

私の好きな万城目学さんの本に「鹿男あをによし」(幻冬舎文庫)があります。 鹿男あをによし (幻冬舎文庫) 作者:万城目 学 幻冬舎 Amazon この本に、大学の研究室を追われた主人公が、奈良の女子高に赴任し、非常に苦労する始めのあたりで、 それぞれがそれ…

「保育の保障」と「幼児教育の保障」

だいぶ前になりますが、国の少子化対策について以下の記事がありました。 共働き家庭が急速に増加する中、幼稚園の預かり保育が普及し、保育所との役割の差は小さくなっている。保育所でも小学校入学前に必要な非認知能力など幼児教育の重要性が高まっている…

「幼保の一元管理」は形式的な話か、それとも子どもの幸せに直結するか

こども家庭庁を設置する話題において、新聞紙上でよく課題提起されているのは、組織の検討において幼保の一元管理が進まなかったという点と、財源面が充実するか分からないという点の2点です。 子ども中心の行政を確立するとともに、少子化に歯止めをかける…

教育行政をおこなうものについて

「王のなすべきことは、一つの樹から百の果実を得られるような優秀な人材を、長期間かけて育成すること」 ~ 一年の計は穀(こく)を樹(う)うるに如(し)くは莫(な)く、十年の計は木を樹うるに如くは莫く、終身の計は人を樹うるに如くは莫し。 一樹一穫…

こどもの貧困について

以前にSNSで「『努力すれば結果はついてくる』というのは本当か」という質問をみました。 仏教の「因縁」という考えでは、結果があるのは「原因(当人の行い)」と「縁(周辺環境)」があってのことだと言われますが、つくづく縁は大切だと感じます。 「がん…

「こどもまんなか社会」と「こどもの最善の利益」

最近なぜか、宣伝文句に冷めた目でみるようになってます。 「とろとろ牛すじカレー」と書いてあるのをみると、無意識に「とろとろ」を外して「牛すじカレー」。 「名物特製チャーシュー麺」も「チャーシュー麺」ですし、「店長入魂肉汁たっぷり餃子」も、ま…

公教育のイロハをふりかえる

前回の記事では、学校より先に子どもがいて、その子どもの学習権があって学校が存在するという話をしました。 kobe-kosodate.hatenablog.com 今回は、ちょっと教科書的な話になりますが、「公教育」「学校」「義務教育」といったワードが何を指しているのか…

「教育の本来の形」について

コロナ禍で少しも気の抜けない中、受験シーズンに突入しました。 私は、大学受験で、泊まらなくてもいけそうな距離なのに、ビジネスホテルに泊まって受験したいと言い出し、当日の朝にホテルの朝食バイキングに興奮して、牛乳とオレンジジュースとグレープフ…

教育の取り組みを決めるときに拠りどころとする「専門性、思いや印象、世論」について

国や自治体の教育政策は行きあたりばったりだと言われることがあり、それは教育に限ったことではありません。 ただ、教育には皆さん一家言あり、しかも本人の経験に基づく確固たる自信のもとに、保護者も、地域住民も、その代表も、学校関係者も、私を含めた…

学習における金銭の動機付けについて

令和4年が始まりましたが、年度でみると令和3年度も大詰めです。 各自治体では、令和4年度の予算を決める議会が2~3月にあり、それに向けて、来年度に何を打ち出すか、推進するかの検討がほぼ決まっていたり、あるいは大詰めの段階だと思います。 往時…

「能力に応じた」教育を受ける権利とは

前回の記事で、教育は人権保障の観点から進められるものとして、日本国憲法第26条第1項に「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」とあることを紹介しました。 kobe-kosodate.hatenablog.com この…

愛のある学問(教育)とは何だろう

小学校高学年の授業の一部で来年度から、教科ごとに担任を充てる「教科担任制」が導入されるということで、政府が来年度予算案で950人の教員の増員を決めたという報道がされています。 年度末にかけて、国や自治体から来年度の取り組みが発表されていくこと…

独りよがりな教育施策をしないために

今回は、自治体が教育施策を考えるときに気に留めたい点を振り返りたいと思います。 何回かに分けて取り上げたいと考えていますが、まずは「教育」に対するさまざまな受け止めを例に挙げてみます。 1.将来不安と、投資としての教育? 2.教養は人生の裾野…

幼保小接続、架け橋プログラムとは(その2)

幼保小接続についての続きです。 前回の記事は、以下に掲載しています。 kobe-kosodate.hatenablog.com 1.十園十色 2.教育の方向性も内容も異なるのは国の施策の方向ではなかったか 3.「就学までに基本的な生活習慣を身に着けさせる」が保護者へのプレ…

幼保小接続、架け橋プログラムとは(その1)

12月15日に、中央教育審議会の初等中等教育分科会に設置された「幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会」の第5回会議が開催されていました。 幼保小(幼稚園・保育所(園)・認定こども園等と小学校)の育ちや学びの接続を進める、いわゆる「架け橋プログ…

幼い子どものために「働くべきか、しばらく家で子どもをみるべきか」を悩むとき

保育園や幼稚園に入園する前の子どもがいて、出産に伴っていったん仕事を辞めておられるお母さんでしたら、早々に仕事を探して復帰するか、3歳ぐらいまでは家で見た方がいいのかなとか悩まれる方もいます。 正規社員の人をみて、育児休業が開けてバリバリや…

何かあってからでは遅い!自治体の大事な仕事、認可保育園等への指導について(その2)

以下の記事に続いて、保育の質の担保についてみていきます。kobe-kosodate.hatenablog.com 1.「公共性」と「園の個性」 2.「子どもを人質にとられているようなもの」 3.苦しい目をさせることは、しつけの一環か 4.園の自主点検や第三者評価の取り組…

何かあってからでは遅い!自治体の大事な仕事、認可保育園等への指導について

平成29(2017)年、兵庫県姫路市の認定こども園における不適正な保育による認定取り消しが、新制度後初の認定こども園の認定取り消し事例となりました。 今年の夏にはその裁判についてニュースになっていました。 「わんずまざー」元園長、再び有罪 給付金詐…

幼保一元化をどうみるか

国が検討中の「こども庁」創設に向けた検討で、文部科学省が幼稚園所管を固辞しているために幼保一元化は先送りの見込みだと報道されています。 こども庁、政策の「一元化」遠ざかる 文科省からの移管見送りへ 子ども関連政策を中心に担う「こども庁」の新設…

幼保一元化のこれまでの取り組みとは

子ども関連施策の充実に向け、国が検討中の「こども庁」創設が先送りになったというニュースが、新聞の紙面を賑わしています。 これによって幼保一元化は先送りだと報道されていますが、これらをどう見ればよいのでしょうか。 【独自】こども庁創設、省庁調…