自治体職員が書く“子育て支援・教育行政”

行政窓口で待機児童の家庭のお話をうかがったり、制度設計に奔走している者にしかわからないところを伝えたい、という思いで書いています。子どもの幸せ・親の幸せに幼児教育・保育制度はどう寄与していけるのか、一つひとつ制度を深掘りしていきます。

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こども家庭庁発足など、こども・子育て支援の新しい政策が実施されようとしていますが、その土台となる理解のおともとして、自治体職員はもとより、教育・保育に従事される方々などにも好評いただいています。

子育て支援の仕事のあらゆる場面でどうぞ。

【目次】
第1章 子育て支援部門へようこそ
1-1 親が子育ての幸せを味わえる社会をつくる
1-2 「子育て支援」は「子ども・子育て支援」の略
1-3 「子ども・子育て支援」とは何か
1-4 重層的で切れ目ない子育て支援
1-5 自治体間の分担と行政機関の役割
column こども家庭庁

第2章 担当者が心得るべき仕事の初手
2―1 子ども・子育てを取り巻く現状を把握する
2-2 良質な行政サービスを理解して実践する
2-3 実情と現場を知ってアドバンテージを手に入れる
2-4 客観的な状況の見極めと連携した支援を行う
2-5 子ども・子育て支援法の枠組みを理解する
2-6 法規の理解が子育て支援事務の土台になる
column 悪質なクレームや不当要求行為

第3章 母子保健
3-1 すべての子どもが健やかに育つ社会をつくる
3-2 読んでおくべき関係法規
3-3 母子保健業務① 健康診査・検査
3-4 母子保健業務② 保健指導など
3-5 母子保健業務③ 医療対策など
3-6 「母子保健」と「児童福祉」の一体的な支援を進める
column 児童憲章

第4章 家庭での子育てと子ども育成支援
4-1 在宅での子育てを支え、学齢期の子どもを育む
4-2 読んでおくべき関係法規
4-3 家庭での子育て支援の業務
4-4 学齢期の子ども育成支援の業務
column 育児休業

第5章 幼児教育・保育
5-1 乳幼児期の育ち・学びを保障する
5-2 読んでおくべき関係法規
5-3 幼児教育・保育を提供する多様な施設類型
5-4 幼児教育・保育の業務① 自治体が行うマネジメント
5-5 幼児教育・保育の業務② 教育・保育の利用に関する事務
5-6 幼児教育・保育の業務③ 保育サービスのさらなる充実
5-7 子育て家庭と教育・保育や支援サービスをつなぐ
column 幼児期と小学校の育ち・学びをつなげる取組み

第6章 障がいのある子どもへの支援
6-1 すべての子どものその人らしい成長を支援する
6-2 読んでおくべき関係法規
6-3 障がいのある子どもへの支援の概要
6-4 児童福祉法に基づく障がい児支援サービス
6ー5 自治体のマネジメントと利用に関する事務
column 一人ひとりの教育的ニーズを踏まえた学びの充実

第7章 子育て家庭への経済的支援・ひとり親家庭支援
7-1 安定した生活による子ども・家庭の福祉向上
7-2 手当支給の業務
7-3 福祉医療費助成の業務
7-4 基礎知識としての税・公的医療保険・年金
7-5 ひとり親家庭支援の意義と読んでおくべき法規
7-6 ひとり親家庭支援の取組み
column 少子化社会対策と次世代育成支援対策

第8章 社会課題のしわ寄せを受ける子どもへの支援
8-1 子ども・家庭を取り巻くさまざまな社会課題
8-2 読んでおくべき関係法規
8-3 子どもを社会で養護・支援する取組み
8-4 関係機関が連携・協働して養護や支援を進める
column 心理的困難や問題行動のあった児童の福祉

第9章 仕事を深める次の手
9-1 当事者意識をもち支援全体を俯瞰する
9-2 寄り添う心と自身の経験に縛られない謙虚さをもつ
9-3 子ども・子育て支援の拠りどころ
column 施策を練り上げる

 

「不適切保育」と保育の内容

 先日、「『虐待したい人なんていない』 保育現場、負の連鎖」の見出しで、保育現場についての記事が出ていました。 

「何でできないの」。駆け出しの保育士だった女性(29)は、2歳の園児を怒鳴った。生活発表会が迫っているのに、教えた歌や踊りの動きができていない。ぶざまな発表会にはできない。そんな焦りに比例して、園児に発する言葉は強くなった。

■厳しい職員配置基準、余裕奪う

 短大を卒業した2015年、就職先は生まれ育った西日本の中核市にある保育園を選んだ。楽器を演奏しながら行進するマーチングや、組み体操など行事やイベントが多いことで保護者から人気の園だ。

 感性を育み、情操の発達に努める。克服が可能な課題に取り組み、園児に一つでも多くの達成感や成功体験を味わってもらう。イベントの重要性は理解していた。

(中略)

 でも、園児の習熟は、思った通りに進まない。ベテラン保育士が思い描くレベルの動きになっていないと、若手の保育士は子どもたちの目の前で叱責された。

 女性は「子どもは大人をよく見ています」と話す。走り回る園児に注意しても、聞き入れてもらえないことがあった。「私のような新人を下に見るようになったからだ」と思う。教室から出して廊下に立たせ、「もう入って来なくていいよ」と告げた。

 うまく園児を導けない。上司に怒られる。園児への言葉が強くなる。負の連鎖が断ち切れず、子どもたちを怒鳴ることが日常茶飯事になっていた。

(中略)

 保育現場の過酷さは以前から指摘されてきた。その一つが、子どもの人数に対する職員の「配置基準」だ。保育士1人がみる園児の人数は0歳児で3人、1~2歳児は6人、3歳児は20人、4~5歳児は30人となっている。1~2歳児は半世紀以上、4~5歳児は基準が制定された1948年から一度も変わっていない。(以下略)

(出典:毎日新聞 令和5年5月19日 朝刊)

 ぶざまな生活発表会にはできない、ベテラン保育士の圧力もあり、つい子どもに声を荒らげてしまう、それも過酷な現場で職員の配置が足りないからだとの論調です。

 これをどう読んだら良いのでしょうか。

 今回は、「不適切な保育」と保育内容についてみていきます。

1.職員配置基準の改善

 記事のとおり、保育園などには、職員の配置基準があります。

 もちろん基準より多く職員を配置してもかまいませんが、園に国・自治体から入る給付費は、あくまでも配置基準に基づいて支払われますので、基本的には、配置基準以上の先生の給料は、園が身銭を切らなければなりません。

 なお、先生の勤続年数など、職員の状況や園の取り組みなどに応じてさまざまな給付費を加算するルールもあります。

 さまざまな発達段階の子どもがいる中で、また、少子化対策としても、職員配置は十分でないという指摘があり、少しずつ改善も進められ、国も今後の検討を進めているようです。

今後3年間で加速化して取り組むこども・子育て政策

2.全てのこども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充

(2)幼児教育・保育の質の向上~75 年ぶりの配置基準改善と更なる処遇改善~

○ 具体的には、「社会保障と税の一体改革」以降積み残された1歳児及び4・5歳児の職員配置基準について1歳児は6対1から5対1へ、4・5歳児は 30 対1から 25 対1へと改善するとともに、民間給与動向等を踏まえた保育士等の更なる処遇改善を検討する。

(出典:「こども・子育て政策の強化について(試案) ~次元の異なる少子化対策の実現に向けて~」令和5年3月 31 日 こども政策担当大臣)

www.cfa.go.jp

2.行事の指導はどのようにすべきなのか

 ところで、この記事では、園児の習熟が思ったように進まず、教えた歌や踊りの動きができていないと焦る保育士の苦衷が掲載されています。

 そもそも、こうした行事など、幼稚園や保育園ではどのような教育・保育がのぞまれているのでしょうか。

 行事の指導に当たっては、幼稚園生活の自然の流れの中で生活に変化や潤いを与え、幼児が主体的に楽しく活動出来るようにすること。なお、それぞれの行事についてはその教育的価値を十分検討し、適切なものを精選し、幼児の負担にならないようにすること。

(出典:文部科学省「幼稚園教育要領」)

 「幼稚園生活の自然の流れの中で」行うこと、主体的に楽しく活動出来るようにすること、幼児の負担にならないようにすることが、どの園も従うべき教育要領には書かれています。

3.インクルーシブな教育・保育が進められている

 たとえば、学齢期においては、小学校の特別支援学級や特別支援学校に在籍する児童のほかにも、小学校の通常の学級において、学習面や行動面で著しい困難を示す児童が、公立小学校で約1割いると小学校教員が捉えている現状もあります。(文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」2022年)

 保育園や幼稚園でも、インクルーシブ教育・保育が必要とされています。

 この記事に登場される先生は、ぶざまな生活発表会は見せられないと追い込まれたお気持ちだったようです。そんなセリフを読むと、この園は誰のために生活発表会をしているのかと、読んで辛くなります。

 そもそも追い込んでいるのは、施設長なのか、先輩先生なのか、それとも保護者なのでしょうか。

 マーチングや組体操も結構ですが、子どもたちも先生も辛いのならば、幼稚園教育要領に言うところの「主体的に楽しく活動」できていないわけで、少なくとも目の前の子どもたちには、今の保育内容が合ってないということかもしれません。

 それではいくら職員の人数を増やしても、やることは変わらず、子どもたちには要らぬ負担があるままの状態が残されてしまうことも想像されてしまいます。

4.まとめ

 個々の幼児の心持ちを理解して、興味・関心を踏まえて、流動的に学び・育ちの環境を用意して援助することが推進されています。

 園児たちの主体性を引き出して、楽しく活動することが、子どもも伸びて、笑顔も増えて保護者も喜び、先生方のやりがいにもつながることは、私以上に現場の先生方のほうがよくご存知のことなのだろうにと思います。

 職員配置の改善はもちろん大切ですが、それ以前の問題として、園の保育方針の違和感が、この記事の主眼を曖昧にさせてしまっているのではないでしょうか。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。(^^)/

 

 

子育て支援のイロハ⑦(保育園等の利用にあたり「保育料(利用者負担額)を支払う」&「給付する」)

 保育園や認定こども園の利用の流れについて、「子育て支援のイロハ」として①から⑥までお付き合いいただきました。

 最後である今回は「保育料の支払い」と「給付」についてです。

 前回の記事は以下をご覧いただければと思います。

kobe-kosodate.hatenablog.com

1.最後の積み木

 「子育て支援のイロハ①」からこれまで、積み木を載せて家を作るような図で、手続きや事務のつながりをみてきました。

 その例え話でいきますと、最後は、左側から保護者が「保育料」という積み木を、右側から役所が「給付」という積み木をのせる作業になります。

2.「保育料」を支払う

(1)幼児教育・保育の無償

 幼児教育・保育の無償化は、令和元(2019)年10月に始まりました。おおむね3歳(いわゆる年少クラス)から5歳(年長クラス)までの幼稚園・保育所認定こども園などを利用する子どもの保育料が無償になるものです。

 無償化については、以下の記事をご覧ください。

kobe-kosodate.hatenablog.com

 なお、まったくの無料になっているわけではなく、入園時や進級時の費用(私立幼稚園であれば入園金や施設整備協力金のようなもの)などは園によって金額が異なります。

 さらには、制服代や園外保育の費用などについて、実費分を保護者から徴収しているほか、他園よりも高水準の教育を行うなどのために、あらかじめ保護者から同意を得た上で、保育料に上乗せして保護者に負担してもらっている園もあります。

(2)無償になっていない年齢などでの保育料

 無償化の対象になっていない0歳から2歳クラスの保育所認定こども園、地域型保育事業所の保育料は、家庭の収入によってランク分けされて決められています。

 もともと国と県と市町村で費用を負担しあうために設定されている「国基準の保育料表」があり、それをもとに、市町村が保育料を決めています。

3.「給付する」

(1)利用者負担額は、必要な全体費用(公定価格)の一部分

 園は、保護者からの利用者負担額(保育料)だけで運営できるわけではありません。
 子育て支援のイロハ④でご案内した「教育・保育給付認定」は、「新制度の園を利用した際には、その費用の一部を役所から「支給」される権利がありますよ」という「認定」を受けることです。

 したがって、利用者負担額だけでは足りない分は、役所から保護者にいくのが建前ですが、どのみち園に支払わないといけないお金ですので、手続き上、役所から園に直接給付されます。

 このお金を「給付費」といい、このお金の流れを「代理受領」と言います。

 ここで言う全体の「費用」とは、簡潔に言えば園長先生を含めた先生方や事務や調理の方々の給料や、保育材料費、水道光熱費などすべての費用を、在園する子どもの人数で割った一人あたりの費用を指します。

 これは、園がどれだけの子どもを受け入れているかという園の規模によるスケールメリットと、物価などの地域差を考慮して、国が細かく金額を定めています。

 これを「公定価格」といいます。

(2)設置基準どおりの保育に必要な金額=園に入る収入

 公定価格の考え方派、おおざっぱに補助金を国や自治体がドカンと出して園の運営を助けるというものとは異なります。

 役所がわざわざ子ども一人あたりの教育・保育に必要な単価をはじいて、それを全員分足して、その園の全体費用を計算し、毎月園に振り込みます。

 どうしてそのようなことをするのでしょうか。

 それは、教育・保育の「質」を守るためにほかなりません。

 この金額の設定にあたって見込んでいる先生の人数などは、園のそれぞれの種類(幼稚園とか保育所とか)に応じた認可基準(設置基準や設備運営基準というもの)をもとにしています。

 そして、それらの基準は、基本的に最低限守るべき「最低基準」と言われるものであり、さらなる向上に努めるよう求められているものです。

 ところで、特にさまざまな種類の園の中でも、「保育所」で提供する保育については、市町村に実施する責任があることから、役所が認可している私立の保育所の費用は「給付」費ではなく、市町村が社会福祉法人などに保育を委託している「委託」費として、市町村から保育所に毎月振り込まれます。

 そして、そのお金の使いみちには、「使途制限」といい、制限がかけられています。

 そのほかの種類の園では、保育所のような使途制限はありません。

 しかしながら、最低必要な先生の人数や教材費・研修費用などのルールから計算した経費の積み上げが、毎月の役所から園に振り込まれる金額であることを考えますと、一定の教育・保育の質が守られるために、そうやって適正と見込まれる額を定めているのだとしか説明のしようがありません。

4.役所の独自補助

 一方で、これだけでは園は、最低ルールの金額しかないということにもなります。

 そこで役所は、国に頼れない分は、子育て分野に重点的に配分することで、これも市民の税金にはちがいありませんが、独自にお金を工面しています。

 たとえば、「国のルール以上に保育士の先生を配置すれば補助金を出す」や、「障がいのある子どもの保育について先生を追加配置するだけの補助金を出す」などさまざまな取り組みを行っています。

5.まとめ

 子育て支援のイロハ①から⑦まで、長くお付き合いいただきましたが、こうして、「①事業計画」に基づいて、ニーズの分だけの園を「②整備」し、「③認可や確認」を受けた教育・保育の質がきちんとした園と、その量と同等の「④教育・保育給付認定」を受け、「⑤利用調整」された子どもの保護者との「⑥契約」がピッタリとおさまったとき、子どもの福祉向上のために「⑦子どものための教育・保育給付」がきちんと支払われるところまでたどり着くことになります。

 

 ここまでお読みいただきありがとうございました。(^^)/

子育て支援のイロハ⑥(認定こども園等の入園にあたって「利用契約」する)

 保育園や認定こども園の利用の流れの続きを引き続きみていきます。

 今回は短い内容ですが、「利用契約」についてです。

 前回の記事は以下をご覧いただければと思います。

kobe-kosodate.hatenablog.com

1.利用契約

 「認可」(開園OK)を受けた園がそろい、1号の認定を受けた保護者や、保育認定(2号・3号)を受けて役所の「利用調整」で内定した保護者が園に来られます。これで利用契約を結べるところまで来ました。

2.重要事項を説明してもらい同意する

 利用契約のときには、園は保育内容や手続きの説明をして、文書で保護者の同意をとります。

 以前の記事の「子育て支援のイロハ③(保育園や幼稚園の「認可」とは)」でみてきた「運営基準」の中の「①子どもの利用開始のときのルール」です。

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

 また、きちんとした理由もなく入園を断ることはできません(応諾義務)。

  • 第6条 特定教育・保育施設は、教育・保育給付認定保護者から利用の申込みを受けたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。
  • 第39条 特定地域型保育事業者は、教育・保育給付認定保護者から利用の申込みを受けたときは、正当な理由がなければ、これを拒んではならない。

(特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業並びに特定子ども・子育て支援施設等の運営に関する基準(平成26年内閣府令第39号))

 入園中に必要なお金の話などはここでよく聞いておいていただくことになります。
 これで、晴れて利用開始(=入園)できるようになりました。

 

 今回は、非常に短い内容でした。

 ここまでお読みいただきありがとうございました。(^^)/

子育て支援のイロハ⑤(保育園等の入園選考「利用調整」)


 保育園や認定こども園の利用の流れの続きをみていきます。

 前回の記事は以下をご覧いただければと思います。

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

1.「利用調整」が規定された経緯

 「教育・保育給付認定」を受けたということは、「給付を受け取る資格があることを認定した」ことだということを前回みていきました。

 では、この「認定」を受ければ、いつでも園は入園を認めてくれるのでしょうか。

○「1号の認定」を受けている場合

 その園にまだ空きがあれば、「幼稚園」と「認定こども園」で4時間を標準に(園が決めています)利用できます。

 一度に多くの方が申し込まれた場合には、園はあらかじめ決めたルールにしたがって選考します(抽選、早いもの順、兄弟の上の子が入園したことがある、など)。

○「2号や3号の認定(標準時間、短時間)」を受けている場合

 「2号や3号」の認定は、仕事などの事情でまとまった時間、園での保育が必要な子どもを養育する保護者が認定を受けることができますので、「2号と3号」の認定を合わせて「保育認定」とも呼びます。

 「保育認定」で利用できる園は、「認定こども園」と「保育所」、それから「地域型保育事業所」です。

 法律的な話をしますと、実は、定員を超える申し込みがあったときは、どの子どもから優先して入所するかを「園が選考する」と、『子ども・子育て支援法』に定められました

 しかし、一方、児童福祉法』には、当面のあいだ、保育が必要な子ども(「保育認定」の子ども)については、「役所が利用調整する」と定められました

 この二つの法律は、いったいどう読めばよいのでしょうか

 新制度以前、「保育所」の入所選考は役所が行っていました。

 一方、「認定こども園」については(実は「認定こども園」という制度自体は、平成18(2006)年度からありました)、そういう保育を必要とする子どもの利用する枠の入園も、園で選考して決めていました。

 新制度をつくるとき、国は当初これまでの認定こども園のやり方を引き継いで「園が選考する」法律の案としていました。

 ところが、待機児童が多い地域を中心に、保育所認定こども園を保護者がかけずりまわらなくてはならないのではないかという不安の声が多く寄せられました。

 保育研究所編の『徹底検証!保育制度改革 新制度案に子どもの未来は託せない』(ちいさいなかま社)にも、「保育所に入所できるかどうかは親の力しだい」と題し「自分で保育所を探し、入れるまで何か所でも足を運ばなければならなくなります」と、当時の案を批判しています。

 国会の審議中の平成24(2012)年6月に、民主党自民党公明党(当時の政権は民主党)は、法案の修正協議を行います。

 そうして合意された内容を「三党合意」と呼びますが、この協議において、「『保育認定』の子どもの利用については、当面のあいだ、役所で『利用調整』をすること」とされたのです。

 その後、国会の審議を経て、平成24(2012)年8月に法案成立。子ども・子育て支援新制度の法律が整備されました。

 国の制度設計担当も説明会で、「立法府(国会)の判断で『利用調整』が規定されたことは、非常に重く受け止めなければならない」と言っています。

 したがって、先ほどの二つの法律の読み方は、

  • 『子ども・子育て支援法』で、すべての園に「空きがあったら、もっともな理由がない限り、受け入れを拒否してはいけない」という義務(「応諾義務」といいます)を課した上で、「選考はあらかじめ決めた公正な方法で園でやってください」((保育所以外には)「選考権」の付与)としつつ、
  • 児童福祉(子どもの幸せ)の観点から、『児童福祉法』において「役所がきちんと優先順位をつけて、困っている家庭の子どもから責任をもって『利用調整』しなさい」と、『子ども・子育て支援法』の上に「児童福祉」の網をかぶせて、「本当に保育が必要な子ども」から優先して利用できるように役所が力を尽くすことを求めています

 実は、この「保育が必要な子どもについては、役所が利用調整しなさい」という『児童福祉法』の規定のあとに、

  • 十分な養育を受けられていない子どもの保護者が申し込みをしてこない場合は、「役所が、保育所や幼保連携型認定こども園などの申し込みを勧めたり、申し込めるようフォローしたりしなさい」
  • それでも申し込まないときは、場合によっては、「役所が、保育所や幼保連携型認定こども園への入園を決めてしまいなさい(「措置(そち)」といいます)」と、立て続けに規定されています。

 どんな家庭の子どもが優先的に利用すべきなのかは、皆さんそれぞれの価値観によって、答えもちがってくるのは当然ですが、「子どもの福祉」の観点から利用調整はなされるべきものだということを示しています

2.利用調整の基準

 「利用調整」は、保護者の希望にもとづき役所が行うものですので、希望していない園へ勝手に入園をあてがわれるということはありません。保護者の希望する園について、役所は、あらかじめ定めたルールにしたがって利用調整をします。

 国は、現在の保育制度の源流である、昭和の措置入所制度の時代から、「保育に欠ける児童(今で言うところの「保育認定」の子ども)の申し込みが、保育所の定員を超える場合は、児童の家庭の構成(たとえば、ひとり親家庭であるとか、親以外の同居している親族が子どもを保育できないのかどうか)や、親の就労時間などの状況を十分把握して、入所する児童を決めなさい」と自治体に指導してきました。

 また、「その決定にあたっては、画一的な書面審査に頼ることなく、必要に応じて必ず実地調査を行いなさい」としてきました。

 私は選考作業の一環として、待機児童のおかれている現状の確認のために、その子どもの家庭が営む事業所や農作業の場を訪問したことがありますが、百聞は一見に如かずというように、入庁したての私には非常に勉強になりました。

 利用調整では公平性や透明性が求められるため、家庭での保育が困難な度合いを点数化して利用調整している役所が現在は多いですが、これまでの選考の趣旨を引き継いで、親の就労時間などの状況や、ひとり親であるか否か、同居する親族の状況などを点数化していたり、現在の保育状況(認可外保育施設を利用している、など)や、申し込みの子どもの兄弟・姉妹がどこで保育されているかなども点数化したり、さまざまに項目を設けて優先度合いを判断しようとしています。

 新制度において、国は優先度の高い例として、①虐待が疑われる、②配偶者間などで家庭内暴力(DV)のおそれがある、③ひとり親家庭、④生活保護世帯で就労による自立支援につながる場合、⑤障がいのある子どもの利用できる園が制限されている場合、⑥育休明け、⑦多子世帯 など、さまざまな事例を挙げており、役所はそれらについても考慮した点数表やルールを作っています。

 利用調整の点数表などは、「審査基準」といえるものですので、窓口に備えつけるなど市民の目にふれるようになっています。

3.利用調整の趣旨

 この利用調整は、役所としても精神的に非常に労力を費やすものですが、どの子どもも保育認定を受けている以上、保育が必要な状況であることに変わりはなく、利用資格がある中での順位付けは、入園できなかった親にとっては、どうしても納得しづらいものであることは否めません。

 この点数は、家庭での保育が困難な「現状」の度合いを相対化するために設けているものですので、親の「努力」を評価するような趣旨の点数ではありません。

 しかし、保育所等に入れないと働くこともできないため親も必死ですし、ネット上では「保育所合格最低点は200点」だとして、「点数をどうやって上げるかが保活の鍵」などとさまざまな口コミがあふれています。

 ほかにも、「点数が高くないと入れない園の市内上位20位に、うちの園がランクインしました」とブログで胸を張る園の運営者があらわれているのを見ると、非常に複雑な気持ちになります。

4.まとめ

 優先順位の決め方について、市にもさまざまなご提案を頂戴します。

 たとえば、「国が女性の活躍というのだから、女性が起業するような人間を優先すべきだ」「保育士不足で困っているのだから、保育士の子どもを優先すべきだ」「どんどん生んでもらいたいと国が言っているのだから、多子世帯の子を優先すべきだ」「わが市の人口減少をくいとめるために市外からの移住者を優先すべきだ」など、本当にさまざまなご意見をいただいてきました。

 『児童福祉法』やこれまでの制度運用の経緯を振り返れば、そもそもの「利用調整」は、国・役所の政策的誘導のためではなく、また、努力する親が「第一希望の園」に子どもを入園させられることに主眼が置かれた制度でもないことが見えてきます。

 保育が必要な切迫した状況があっても、「応諾義務」を園に義務付けるだけでは入園までたどりつけない親子がある可能性を前提に、その子が「どこかの通える園」で必ず保育を受けられることが眼目の制度であると読めます。

 地域によって状況はだいぶ異なると思いますが、誰もが保育認定さえ受ければ、通える距離でどこかの園には入園できる、そんな需要と供給のバランスがある程度落ち着いたころには遅くとも、現在の点数制度について、その趣旨に照らしてもう一度あり方を考え直すことが必要になることも想定されます。

 

 ここまでお読みいただきありがとうございました。(^^)/

子育て支援のイロハ④(幼稚園・保育所・認定こども園等の入園に必要な「教育・保育給付認定」)

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 前回は、園を用意する流れとして、「整備」⇒「認可・確認」とみていきました。

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

 次は、その園を利用する方の流れをみていきます。

 

 国では「こども庁」の創設の検討と相まって、幼稚園や保育所を一元的にカバーすることについて議論が再び盛り上がって消えました。。。

 その理解の前提として、現在の入園手続きや園の運営費の補てん(給付)の土台となっている「教育・保育給付認定」についてみていきます。

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1.そもそも「給付」とは

 「給付」とは平たい言葉でいうと「与える」ということです。現金やモノを与えることを「給付」といいます。

 「子どものための教育・保育給付」は、保育所・幼稚園(のうち新制度の園)・認定こども園・地域型保育事業所という新制度でリストアップされた園に通園するのに必要な経費の一部を、国・県・市が保護者の代わりに現金を「給付」して補てんするという制度です。

 これにより、初めて幼稚園と保育所が運営面で同一の仕組みに乗ることになりました。

2.園を利用するためには「教育・保育給付認定」が必要

 新制度の園(認定こども園、幼稚園(の一部)、保育所、地域型保育事業所の4つです)を利用するときは、「教育・保育給付認定」というものを受ける必要があります

 「教育・保育給付認定」の申請書にもろもろの書類を添えて役所に提出し、役所が審査した上で認定します。

 先述したように、新制度での保育所や幼稚園の利用は個人給付の制度です。税金として市民の皆さんから集めたお金を、特定の方(今回は園を利用する子どもの保護者)に給付するからには、「その保護者が給付を受け取る資格があるかどうかきちんと認定する」という作業が役所には生じます。

3.保育所利用の要件を全国でそろえる狙いもある

 また、これまでの保育所を申し込みできる条件のレベルは、実際には細かい点で地域でまちまちでした。

 ある市町村では幼稚園の代わりのように、子育てできない仕事の時間がほとんどないような人でも保育所が使えるのに、別の市町村では待機児童が多いこともあってか入所要件がきびしく、申し込みすらできないといったことがなくなるように、この「教育・保育給付認定」の基準をある程度国の統一的なルールとすることで、「全国的な公平性の確保の観点から、極力、収れん・一本化していく」ことを目指しています

4.認定によって利用できる時間が異なる

 「教育・保育給付認定」は、大きく1号、2号、3号の3種類があります。

 なぜそう言うかといいますと、『子ども・子育て支援法』第19条第1項の1号、2号、3号に、それぞれ定めがあるからです。2号と3号は、それぞれ「保育標準時間認定」と「保育短時間認定」がありますので、それも分けると、全部で「教育・保育給付認定」は5種類あります。

 それぞれの認定で、園を利用できる時間が異なります。

(1)1号認定(教育標準時間認定)

 満3歳以上の子どもを養育している保護者が認定を受けることができます。

 幼稚園では教育課程を編成しており、年間39週以上、1日4時間を標準に、各園で定めた時間、教育を行うことになっています(『幼稚園教育要領』)。

 1号認定は、ちょうど幼稚園に通園するような子どもの認定ですので、同様に1日4時間を標準に利用できることになっています。

(2)2号認定(保育標準時間認定)

 1か月で120時間以上仕事をしているなど、まとまった時間、園での保育が必要な満3歳以上の子どもを養育している保護者が認定を受けることができます。

 この認定を受けると、保育が必要な範囲内で、園があらかじめ定める11時間の枠を利用できます。これまで保育所では、11時間を超えて延長保育を行っている園に対して、国から延長保育についての補助金の制度がありました。それも踏まえて、1日11時間というところで線が引かれています。

(3)3号認定(保育標準時間認定)

 (2)は満3歳以上の子どもの家庭が対象でした。この3号認定は、満3歳未満の子どもの家庭が対象になります。あとの要件は(2)2号認定(保育標準時間認定)と同じです。

(4)2号認定(保育短時間認定)

 仕事などの事情で、まとまった時間、園での保育が必要な満3歳以上の子どもを養育している保護者が認定を受けることができます。

 たとえば就労の場合、この認定を受けるために最低限何時間就労していることが必要かは役所で異なります。1か月あたり48時間から64時間の範囲で、役所で定めることになっています。

 この認定を受けると、保育が必要な範囲内で、園があらかじめ定める8時間の枠を利用できます。保育所では、「保育時間は、1日8時間を原則に所長が定める」(『児童福祉施設の設備及び運営に関する基準』)ことになっていますので、それを踏まえたものです。

(5)3号認定(保育短時間認定)

 (4)は満3歳以上の子どもの家庭が対象でした。この3号認定は、満3歳未満の子どもの家庭が対象になります。あとの要件は(4)2号認定(保育短時間認定)と同じです。

5.1~3号認定以外の教育・保育の無償化を受けるための「施設等利用給付認定」(新1号、新2号、新3号)

 保護者が受ける「認定」には、この「教育・保育給付認定」のほか、「幼児教育・保育の無償化」により創設された「施設等利用給付認定」があります。

 これは、『子ども・子育て支援法』第30の4の1号、2号、3号に、それぞれ定めがあり、それぞれ新1号、新2号、新3号と言います。

 これらについては、幼児教育・保育の無償化についての以下の記事も参考にしていただければと思います。

 

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

6.まとめ

 「教育・保育給付認定」ができ、はじめて「サービス(サービスという言葉が合わないところもありますが)を受ける必要性があると認定を受けた家庭は、認定内容に応じて園を利用できる」という同じルールに、幼稚園・保育所認定こども園が乗ったことになりました。

 これによって、入園手続きの大きい区分けは、幼稚園・保育所認定こども園・地域型保育事業所という園の種類ではなくなりました。

 どの園でも「教育・保育給付認定」を受けて利用するという大きい括りの中で、

  • ①『仕事などで朝から夕方まで利用する』0~5歳児クラスか(保育所認定こども園・地域型保育事業所)
  • ②『朝から昼すぎまで利用する』3~5歳児クラスか(幼稚園・認定こども園

という、利用時間の視点に変わったところが大きな特徴です。

 加えて①(『仕事などで朝から夕方まで利用する』0~5歳児クラス)については、役所が利用調整(いわゆる「選考」)して入園者を内定する必要がありますが、その「利用調整」についても、基本的にはこの認定制度導入により、園の種類にかかわらず一体で役所が「利用調整」できるようになったのです。

 「利用調整」については、改めてみていきます。

 

 ここまでお読みいただきありがとうございました。(^^)/

子育て支援のイロハ③(保育園や幼稚園の「認可」とは)

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 認可保育園や、認可外保育園、無認可保育園と言う言葉がありますが、「認可」とはそもそも何か、また、平成27年度にスタートした「子ども・子育て支援新制度」で始まった「確認」について見ていきます。

 関連するこれまでの記事は以下を参考いただければ幸いです。

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

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1.「認可」とは

 認可保育園や認可幼稚園として運営しようと思うならば、自治体が審議会(大学の先生や園の先生方の代表などの専門の皆さんのあつまり)に意見を求めた上で、基準(面積基準、職員配置基準、保育指針や教育要領の遵守など)を守って運営を行うものと「認」められ、安心して持続的に経営「可」能だとして、「認可」しなければ、開園(経営)することができません。

 なお、認可を受けずに同じような目的の事業を行うことも可能ですが、それが保育施設の場合、いわゆる「認可外保育所」と呼ばれます。

認可を受けなければ、「幼稚園」や「幼保連携型認定こども園」と名乗ることはできませんが、「保育園」や「保育所」は、認可されなくても、名乗ることが可能です。

2.「確認」とは

 「確認」は何を確認しているのかといいますと、「(市町村が)利用定員を確認する」ということです。

 面積や職員が足りているからといって、どの園も好き放題に子どもを受け入れて運営を行えば、過当競争につながりますし、その好き放題に受け入れた子どもの人数分だけ役所に費用を請求されても、それだけの税金を役所も用意できません。

 ですので「あなたの園では、これだけの人数分の運営規模で運営してもらってOKですよ」と確認するわけです。

 そして、その人数分の経営について税金を投入する以上、最低限守っていただく基準として「運営基準」というものがあります。

 これは、認可の基準とは別に存在します。

3.認可基準・運営基準

(1)認可基準

 開園するには、自治体から認可を受けなければならないと説明しましたが、園の種類によって、認可の基準が異なります。

 まず、認定こども園です。4類型あります。

○幼保連携型認定こども園

 学校+児童福祉施設としての単一施設ですから、幼稚園と保育所の厳しい方の基準を合わせた「認可基準」(ただしくは「幼保連携型認定こども園の学級編制及び設備・運営に関する基準」)を守る必要があります。

○幼稚園型認定こども園

 幼稚園(学校)に認可外保育所(認可されていない敷地部分)が付いた園です。

 「幼稚園の認可基準」(ただしくは「幼稚園設置基準」)と、「幼保連携型以外の認定こども園の認定基準」を守る必要があります。

保育所認定こども園

 保育所児童福祉施設)に認可外幼稚園(認可されていない敷地部分)が付いた園です。

 「保育所の認可基準」(ただしくは「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」)と、「幼保連携型以外の認定こども園の認定基準」を守る必要があります。

○地方裁量型認定こども園

 認可外幼稚園と認可外保育所(どちらも認可されていない敷地)がくっついた園です。「幼保連携型以外の認定こども園の認定基準」を守る必要があります。

○幼稚園

 満3歳以降の子どもを教育する園として、「幼稚園の認可基準」を守ります。

保育所

 乳児からの子どもを保育する園として、「保育所の認可基準」を守ります。

〇地域型保育事業の認可基準

 「地域型保育事業所」ですが、0歳から2歳の子どもを、基本的に少人数で保育する事業で、次の4とおりがあります。

 これらは、それぞれの認可ルールを定めた「地域型保育事業の認可基準」(ただしくは「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」)を守る必要があります。

 このルールで、特に保育所などにくらべてルールがゆるいところは、せまい敷地につくることを見込んでいるため、園庭がなくても近くで代わりの場所(公園・寺社の境内など)があれば良いとしていることや、自分の園で昼食を調理できなくても、他から適切に運んでこれたら良いとしていることなどです。

・小規模保育事業所

 少人数(6~19人)を対象に保育を行います。

 これには、大ざっぱには配置される先生が、①全員保育士であるA型、②半数以上が保育士であるB型、③保育士でなくても決められた研修を受けた先生でもOKのC型、の3類型が国から用意されています。

 ここでも、保育所と同様に0歳(乳児)の段階から「養護と教育が一体になった保育」を提供することとされており、保育所が子どもの保育内容として守るべき『保育所保育指針』に準じて保育を行っています。

・家庭的保育事業所

 家庭的な雰囲気のもとで、少人数(~5人)を対象に保育を行います。

・事業所内保育事業所

 事業所の保育施設などで従業員の子どもと地域の子どもを一緒に保育します。

・居宅訪問型保育事業

 医療的ケアが必要で保育所などでの集団保育が非常にきびしい子どもなど、特定の要件を満たす子どもについて、その子の居宅で保育します。

(2)運営基準

 決まった人数分の経営について税金を投入する以上、最低限守っていただく基準、すなわち「運営基準」です。

 認可の基準とは別に存在します。

 運営のルールには、大きく4点あります。

①子どもの利用開始のときのルール

 利用開始するときには、保育内容や手続きの説明をして、文書で保護者の同意をとって、契約することが必要です。また、きちんとした理由もなく入園を断ることはできません(「応諾義務」といいます)。

②教育・保育の提供についてのルール

 提供する教育や保育の内容について書かれたものに『幼保連携型認定こども園教育・保育要領』や『幼稚園教育要領』、『保育所保育指針』があります。それらを職員全員がよく読んで理解し、それにのっとった園の運営、クラス運営をすることが必要です。

 また、利用中の子どもの心身の状況はつねに心をくばり、もちろん職員が虐待などをしてはなりませんし、親の養育が不適切だ(体が不自然に傷だらけだ)とみとめられることがあれば、きちんと役所と連携して子どもを守る取り組みも必要です。

 そのほか、「地域型保育事業所」は、どうしても小規模な園の都合上、先生の人数も少なく、何か突発的なことがあったときにフォローが行き届きにくく思われること、また、さきほど示したように二歳までの子どもが利用できる園ですので、三歳以上の年齢になると、大きな園(認定こども園、幼稚園、保育所)に転園しなければならないことが保護者にとって不安です。

 そのために、「地域型保育事業所」は、「連携施設」を用意しなければならないというルールがあります。「連携施設」には、近隣の認定こども園保育所、幼稚園がなるのが一般的です。

〇連携施設の役割

 連携施設の役割は次の三つです。

1「保育内容の支援」

 連携施設の先生が、保育内容を教えにいったりする。また、共同で行事をしたりする。

2「代替保育士の提供」

 地域型保育事業所の先生が研修などの事情で手が足りないとき、連携施設の先生がフォローにいく。

3「三歳以上の受け皿」

 地域型保育事業所を卒園する子どもの人数を、連携施設側はあらかじめ見込んで、スムーズに転園できるように枠をあけておく。

〇その他

 さらに、役所が決める保育料(「利用者負担」といいます)を保護者から徴収すること以外にも、園によって、英語教室や体操教室など、さまざまな園独自で取り組む費用を別途徴収するもの(「上乗せ徴収」)や、制服代やカバン代、楽器など実費を負担してもらうもの(「実費徴収」)について、保護者の同意をきちんととって、徴収することなどが決められています。

③管理・運営についてのルール

 園の運営方針や職員数、開園時間など重要なことをまとめた「運営規程」をつくって、利用者が見えるところに掲示するなど公表します。

 また、業務上知りえた秘密をもらさない「個人情報保護」のルールを定めて職員間で徹底することや、「非常災害の対策」、「衛生管理」、「事故防止や事故発生時の対応」についてきちんと園でルール化して対応できるよう用意します。

 さらには、 よりよい運営を行うために、「自己評価」や「保護者や地域住民による外部評価(学校関係者評価)」、「第三者評価」という取り組みに努めることや、保護者などからの苦情・要望に対する「苦情解決」の窓口をきちんと用意して、対応するルールをつくっておくことも必要です。

 そのほか「会計処理」についても誤りなく行うよう決められています。

④撤退するときのルール

 最後のルールは、経営を縮小する、あるいはとりやめるという事態になった場合の、保護者に対する対応です。

 この場合、無責任に園を閉めたりせず、子どもがほかの園でスムーズに同様のサービスを継続して受けられるよう、転園のための協力をすることが求められています。

3.まとめ 

 以上が、認可と確認の概要です。

 これら認可・確認について正しく知れば、「認可施設でも認可外施設でも似たようなものだ」とか、「認可外施設への利用も促して、待機児童を減らそう」という言葉は出てこないのではないかと思います。

 また、この認可や確認に基づいて、役所はしっかりと質の確保を図っていかなければなりません。

 それについては、次の記事にも紹介しています。

kobe-kosodate.hatenablog.com

 

 ここまでお読みいただきありがとうございました。(^^)/